建物内に電気を安全に送電するためには、分電盤の設置が欠かせません。
分電盤には家庭用だけでなく、工場や店舗などの大型施設で使用するもの、太陽光発電に対応したものなど、複数の種類があります。
そのため、どのタイプを使用するべきか事前に把握しておくことが必要です。
そこで今回は、分電盤の種類を用途と共にご紹介します。
記事内では分電盤の選び方や取り扱いメーカー、取り替え時期の目安なども解説しているため、あわせてご覧ください。
目次
分電盤とは
分電盤とは配電盤から送られてきた電気を、コンセント・エアコン・照明など、さまざまな電気機器へ送るための装置です。分電盤の中には安全ブレーカーや漏電ブレーカーが入っており、通電中に過電流や漏電が起きても発煙や火災などの事故が起きないように制御されています。
分電盤は、一般家庭だと洗面所や玄関、勝手口などに設置してあるケースが多いです。
一方、オフィスなどの分電盤は多くの場合、各階に設置されています。
漏電遮断器の種類・用途
この項目では、分電盤の種類を用途と共にご紹介していきます。住宅分電盤
住宅分電盤とは、電力会社から供給される電力を一般住宅の照明やコンセントに供給するための分電盤です。
過電流や漏電などの異常が検知されると、自動的に安全ブレーカーや漏電ブレーカーが落ちるため、もしものときも発煙や発火などの事故を防ぐことが可能です。
住宅分電盤に送られてきた電気は、リミッター・主幹ブレーカー・分岐ブレーカーの順に経由し、各回路に振り分けられます。
各装置には安全性を高める機能が備わっており、それぞれが家庭の電力安全を守るために作動しています。
電灯分電盤
電灯分電盤とは単相の100Vおよび200Vの分電盤で、主に100Vの照明やコンセント電源として使用されています。
住宅用分電盤と似ていますが、電灯分電盤はその名のとおり、コンセント回路や照明回路を担当する分電盤です。
電灯分電盤は、金属または樹脂製の箱の中に収められています。
幹線から送られてきた電気を開閉する配線用遮断器(主幹)と、分岐ブレーカーが内蔵されており、エリア別または回路別に電気を分けていく仕組みです。
動力分電盤
動力分電盤とは、工場やビルなどの商業施設や大規模設備などで、ポンプやエアコンなどに配電したり電力を制御したりする装置です。
動力分電盤の役割は住宅分電盤と似ていますが、電力分電盤は比較的大きな電気設備へ送電を行うために使用されるので、家庭用の電気機器に送電を行う住宅分電盤とは使用目的が異なります。
動力分電盤にはブレーカーや接触器、リレー、電圧計や電流計などの計器類、端子台が組み込まれており、すべての機器が連動して電気系統の配電と制御を行っています。
電灯動力分電盤
電灯動力分電盤とは、大きな電力を使用する際に用いられる分電盤で、電灯分電盤と同じくコンセントや照明など、電灯関係の電源として使用されています。
しかし、電灯分電盤のように一般家庭の電気製品に対してではなく、工場や店舗などに設置されている大きな機会に送電・制御するために活用されることが多いです。
電灯動力分電盤も過電流や漏電が発生した際は、発煙や火災などの重大事故を未然に防ぐため、自動的に電気回路が遮断されます。
テナント用分電盤
テナント用分電盤とは、商業施設やオフィスなどの各テナントに、電力を供給したり電力を制御したりするための分電盤です。
テナント用分電盤は金属や樹脂で製造されており、内部に安全ブレーカーや漏電ブレーカーなどが設置されています。
過電流が起きたときや漏電が起きたときは、各ブレーカーが自動で落ちて重大事故を未然に防いでくれます。
テナント用分電盤を設置していると、異常電流が発生してもテナントごとにブレーカーが落ちるため、ビル全体が停電することはありません。
自立型分電盤
自立型分電盤とは、床面にベースをはかせて床へ設置するタイプの分電盤です。
一般的に分電盤といえば、壁の中に埋め込まれていたり、直接壁に付けられていたりするタイプが多いです。
しかし、工場や大型商業施設など、多くの電気製品を使用する場所では自立型分電盤を活用し、特定のエリアや機器に対して独立した電力供給および制御を行っています。
自立型分電盤を設置していると、異常電流が生じたときも建物内の停電によるリスクを最小限に抑えることが可能です。
開閉器盤・引込盤
開閉器盤および引込盤とは、送電された電気を建物内に引き込む際に設置される共用分電盤です。
開閉器盤(引込版)は、屋外配線と屋内配線の結合部分に設置され、電気の通電を開閉するために利用されます。
開閉器盤(引込盤)は、主開閉器と分岐開閉器の2つで構成されており、屋外配線から主開閉器に電気が送電されています。
分岐開閉器を経由したあと、建物内の照明器具やコンセントなどの分岐回路へ電気が流れる仕組みです。
開閉器盤(引込盤)は、検針や停電、定期点検を行う際に中を開けて状態を確認します。
太陽光発電用盤類
太陽光発電用盤類とは、太陽光を電気に変換するために必要な機器や部品の総称です。具体的には、以下のものが太陽光発電用盤類と呼ばれています。
- 太陽電池モジュール:太陽光を電気に変化する装置
- 接続箱:太陽電池モジュールからの直流配線を1本にまとめ、パワーコンディショナに送る装置
- パワーコンディショナ:太陽電池モジュールで発電した直流電力を家庭用の交流電力変換する装置
- 分電盤:家の配線に電気を分ける装置
- 電力量計:電力の売買を計量するメーター
- 蓄電池:電気を溜める装置
- 発電量モニタ:発電量や消費電力量などを表示する装置
パイプシャフト室用分電盤
パイプシャフト室用分電盤とは、パイプシャフト内に設置する分電盤です。
パイプシャフトとは、給水管・配水管・ガス管などをまとめて通すスペースのことで、建物の下階と上階をつなぐように設置されています。
キッチンや浴室、洗面所からの排水部分、トイレからの排水部分の2箇所に設置されているケースが多いです。
パイプシャフト室用分電盤は、ドアを開閉しなくてもブレーカーの操作が可能なため、パイプシャフトのような狭い空間への設置に適しています。
増設用分電盤
増設用分電盤とは、既存の分電盤だけでは電力供給が難しくなった場合に、追加で電力供給を可能にするための分電盤です。
具体的な導入タイミングとしては、既存の分電盤に空きがなくなった場合や、新しく電気機器を導入した場合などが挙げられます。
増設用分電盤は省スペースにも取り付けられるよう、コンパクトサイズに設計されています。
また、一度に複数の回路を増設できるため、追加で回路が必要になった場合でも柔軟に対応可能です。
EV・PHEV回路付
EV・PHEV回路付とは、電気自動車(EV)や、プラグインハイブリッド車(PHEV)の普通充電に対応した専用回路が標準装備されている、住宅用の分電盤です。
EV・PHEV回路は通電中、連続して大きな容量の電流が流れるため、200Vの専用回路が必要とされています。
漏電ブレーカーは、日本配線システム工業会の「EV普通充電用電気設備の施工ガイドライン」で、感度電流値15mAと決められています。
自宅でEV・PHEVの充電が必要な場合は、EV・PHEV回路付の専用分電盤の設置が必要です。
分電盤の交換時期の目安
日本電機工業会による、「住宅用分電盤用遮断器の更新推奨時期に関する調査報告書(平成8年3月)」によると、分電盤の交換時期は13年が目安に設定されています。分電盤は13年以上使い続けると、過電流や漏電などの異常電流が発生しても異常を検知しなかったり、適切なタイミングで電流を遮断できなかったりするため、13年を経過したら取り替えるようにしましょう。
ただし、漏電ブレーカーが付いていない、分電盤が変色・破損しているなどの異常がある場合は、13年未満でも取り替える必要があります。
分電盤の選び方・比較ポイント
分電盤を選ぶ際は、まず設置場所でリミッタースペースの有無を判断します。北海道や東北地方で契約容量が6kVA以下の場合は、リミッタースペースが必要です。
また、東京や中部、北陸地方で契約容量が6kVA以上の場合は、契約している電力会社の支店に必要の有無を相談しなければなりません。
次に、相線式のタイプを決めます。
分電盤の相線式には単相3線式と単相2線式の2種類ありますが、単相2線式は最大100Vまでしか使えないので、現在は単相3線式が主流です。
次は、主幹ブレーカーと分岐ブレーカーの種類と容量および回路数を決めます。電気の使い方に応じて、それぞれ決めていきましょう。
最後に、タイムスイッチや開閉器などを取り付けたい場合は、フリースペース付きの分電盤を選び、必要な機器を設置してください。
分電盤を扱う主なメーカー
分電盤は、主に以下のメーカーで取り扱っています。
分電盤はメーカーによって、太陽光発電に対応しているタイプ、地震や雷を検知したら自動停止するタイプ、スリムタイプ、壁内配線で生じた火花も検知できるタイプなど、複数の種類があります。
分電盤は見た目が同じでもメーカーによって機能が大きく違うため、分電盤を選ぶ際は、各メーカーの特徴を事前によく把握しておきましょう。